摩天楼オペラ彩雨 公開講義
「音楽とテクノロジー ~原子音と電子音をつなぐ音楽クロニクル~」
2016.7.10(Sun) at 京都情報大学院大学
後編です!
前編はこちらから!
***********************************************
世界最古の楽器
昨年、世界最古の楽器が発見されたと話題になり、講義でも紹介した。
物質の炭素(?)の量を調べると何年前のものか分かる。
4万2000年前の笛かと思われたが、実際は動物がくわえて穴が開いて笛っぽくなっただけだった……。
地球ツアー@京都での「太鼓」っていうのは本気でただの洒落だっただけなの?
ちょっと信じてた笑
「これが世界最古」と言えるものはないのだそうです。
パラダイムシフト
=世の中がひっくり返るほどの重大な出来事。
その中から音楽に関係するものをご紹介。
(1)活版印刷
グーテンベルクが1450年に発明。
文字を並べ替えて印刷する技術。
これにより大量の本が刷られるようになり、本の知識や知恵、考え方が広く伝わるようになった。
聖書の大量出版が可能になり、音楽にも大きな影響を与えた。
特にキリスト教は音楽に大きな影響を与えている。
西洋音楽は教会音楽として今日まで発展を遂げてきた。
昔の音楽家は教会に属していたか、貴族をパトロンとして生活していたかのどちらかであった。
また、活版印刷の発明により楽譜の大量印刷も可能になった。
cf.ロックの歴史
ロックの生まれたきっかけもキリスト教である。
1619年 アメリカに黒人が奴隷として入国。
同じ言語の者はバラバラにされ、結託できないようにさせた。
白人は黒人にそれまでの宗教を捨てさせ、キリスト教を布教した。
キリスト教は「神の下に平等」
黒人もキリスト教を受け入れるようになり布教活動を行うが言葉がない。
そこでキリスト教の教えを音楽にしたのが、のちの黒人霊歌、ブルースである。
これらは独特のリズムやハーモニーを持ち、それをバンドスタイルで演奏した音楽と、白人のカントリー音楽が融合し、ロックが生まれた。
(2)産業革命 18世紀のイギリスにて
大量生産が可能になり、資本主義に拍車をかけた。
また、金持ちが生まれ、金持ちのステータスとしてピアノがよく売れた。
♪ピアノ ギターやバイオリンと違ってチューニングが難しい。
純正律から平均律の発明は絶妙なタイミング。
ピアノの普及と平均律の発明により、全音音楽が作れるようになった。
ex.ドビュッシー
今までにない音の響きを探す
(3)情報化社会
インターネットとコンピュータの発展の中でも、音楽により大きな影響を与えたのはWEBの高速化。
WEB
1980年代 コンピュータが買えるようになっていく
1990年代 自由にインターネットが使えるように
2000年代 高速化←音楽にとっての革命!!!
cf.CDが発売されたのは1982年。
2000年頃からネットで音楽が聴けるようになり、海賊版が増えた。
あやくす「海賊版は90年代にもあったんだよ!?
30代過ぎくらいのバンギャはテレビにレコーダーを近づけて録音してたはず!
四天王とか!」
30代過ぎの!バンギャwwwww
四天王wwwwwww
2015年頃からクラウド型が登場。
あやくす「ガチャとかもそうだよね!Sレアの武器が家に届くわけじゃないじゃん。
形のないものに価値を見出すようになってきた」
そして今、クラウド型のサービスが月額課金制になるサービスが登場。
ex.AWA、Apple Music、LINE Music
あやくす「僕はAWAで公式プレイリストやってます。
なので980円かかってないです」
あやくすきゃわたん
◎ネットと音楽の距離の取り方が変わってきている。
昔よりも確実に音楽の数は増えている。
ex.テレビ 昔は全員が月9観てないと話が通じなかった。
昔のいいもの=みんなが大物。
今:みんなが同じ音楽聴かなくなった。
あやくす「90年代はみんな小室さん聴いてたと思う。僕も小室さんしか聴いてなかった」
◎人々の趣味の多様化
多様化とインターネットは相性が良い。
インターネット⇒自分で情報を探しに行ける。
昔は雑誌。
テレビに出ていなくても、好きな音楽を広められる。
多様化していく中で、インターネットが力を発揮するのは、今から!
あやくす「AWAで色んな音楽を聴くようになりました」
新しい音楽との出会い
↓
新しい多様化
↓
新しい文化を創っていく
あやくす「本当の多様化はここからだと思います。楽しみです」
音楽の未来を考える
(1)未来の楽器
「未来の楽器を考える」を秋の講義の課題にしている。
注目してほしいのは“記号としての音楽”
去年の学生さんの中に、歯ブラシの音楽を作った人がいた。
あやくす「磨いている時は普通の音だけれど、虫歯を発見したらデスボイスが鳴る。こういう答えは満点!」
歯ブラシ\ヴォーイ/
生活に溶け込んでいる楽器がついでに仕事もする、という観点が重要。
◎初音ミク
それまで音の鳴る方法は5つしかなかった。
(講義では触れられていなかったけど、去年やった!体鳴楽器、膜鳴楽器、弦鳴楽器、気鳴楽器!。。。あれ4つしかない。。分類が違うのかな。)
6個目が電気の力で音が鳴るもの。
シンセサイザーや合成、音を加工して楽器にしてしまうサンプリングなど。
これからも、誰もが観たことがない音の出し方で音が鳴る楽器が登場するかもしれない。
これまでとは異なる未来の楽器がコンピューターによって生まれる可能性がある
⇒聞いたことのない音楽が奏でられるようになる
⇒楽器の進化が、音楽を変える!
(2)未来の音階
①12音
②17音
③22音
未来の音階を支えるのは、未来の楽器である。
ピアノやギターで12音以外の音を出すことは難しい。
バイオリンはできるかもしれないが、バイオリンはハーモニーを奏でられない。
↓
固定概念を縛られない新たな楽器が生まれると、音階も変わるかもしれない。
音階が変わるのが先か?楽器が変わるのが先か?
どちらが先かは分からない。
(3)未来のライブ
ライブビューイングとかニコ生の中継とか、うちでも何回かやっている。
音の迫力は音量を上げればなんとかなる。
でも、臨場感がない。
ネット中継の発展ですべてが変わるわけではない。
ex.ライブ会場にドローンを飛ばして、普段は絶対に観られない位置から映像を観られたりしたら、中継ならではの価値が生まれるかも。
◎インターネットの発達=チケットの買い方に影響してくるのではないか?
パスモなどのICカードや、マイナンバーの施行で人とICチップが密接にかかわるようになってきた。
例えば今京都にいるということは位置情報から分かる。そんなひとに京都MUSEでこんなライブがあるよ、という情報を送るとか。
どこにいても何をしているのか把握することができるようになってきている時代。
チケットもそのうち出てくるようになるかもしれない。
◎未来のライブは、ライブそのものだけでなく周りを取り巻く環境にも変化が起きていくかもしれない。
(4)著作権
漫画家は描いてナンボ
「ブラックジャックによろしく」佐藤秀峰
⇒著作権を行使しない と発表。
⇒著作権の新しい考え方
今まで:インターネット 削除とのいたちごっこ
↓
佐藤さん:「守る」ではなく「広めていってもらう」
描いてなんぼ。新しい作品を買ってもらえばいい。
⇒難しい、なかなかできない選択
⇒新しい切り口、新しいビジネス
◎佐藤さんに続く人は現れるか?
それはわからないが、「守る」著作権に新しいスパイスをふりかけた。
どういう風に広がっていくかで、新しい芸術のビジネスが増えていくのではないか。
音楽とテクノロジー
毎年変わっていく。2016年も激動の時代。
2016年
(1)VR元年
VR(バーチャルリアリティー)において非常に重要な1年。
PSVRが今秋に発売になる。
VRジェットコースター 映像のみで落ちていく感覚になる。
リアリティ=脳が作ってる
あやくす「ディズニーランドのスターウォーズのやつなんだっけ?スターツアーズ!あれ水かけたり風吹かせたりしてたでしょ。でもVRの技術でそれをしなくてもよくなる。リアリティっていうのは脳が作っている」
他にも
医療:手術のシミュレーション
教育:全員がヘッドギアを付けて、仮想空間で一緒に勉強している気になる
原子力、津波のシミュレーションなど。
cf.3Dテレビはそこまで普及しなかった。
VRはどうなるか?まだ分からない。
(2)ロボット、人工知能
・去年ペッパーが発売になった。
人工知能の発展がめざましい。
ex.囲碁 Googleの人工知能が勝った
ex2.AIが書いた小説が一次審査に通った
⇒他にもできることはきっと増えてくる。
ex3.自動運転で死亡事故が起きた。
悪いのは誰?保険はどうなる?
子どもや介護の業界は人工知能と順応するのではないか。
(3)自由な通信サービス
(4)電力自由化
時間が迫ってきたため、カット!w
携帯壊れて格安SIM検討中の身としては彩雨先生の格安SIM話聞きたかった…笑
(5)テロ
先日のバングラデシュでのテロ事件の犯人は、高学歴の若者。
この事件について、あやくすは次の2つのポイントが気になったのだそうです。
(この辺りから突然文体が変わるかもしれないですすみません笑)
①インターネット
イスラム国とバングラデシュはとても離れている。
インターネットを通じて過激思想が飛び火している。それがネットのこわいところ。
⇒今後、ネットを介した知り合い同士で突発的なテロが起きたりするかもしれない。ネットで会ったことない人と恋愛するくらいだし。
同じ目的意識がある。しかしそれでいて足がつかない怖さがある。
テロを防ぐことが今までよりも難しくなっていく。
②音楽
あやくす「テロリストの1人が音楽をやっていたらしくて。でも、事件が起きる3ヵ月前に突然、ギターの演奏をやめたらしい」
なぜ?
⇒「音楽はよくない」って言ったらしい。
弾いていたのがアメリカの音楽だったとしたなら、ISの教えに反する音楽はよくない。って思ったのではないか。
◎「音楽は国境を超える」
⇒感覚としてよくわかっている。
でもこれはもしかすると、裏を返すと、
全部が何かの国の音楽に染まる
ということではないのか?
音楽は国境を超えるのか。
日本の音楽が世界に広がっているのは、他国の音楽が日本化しているのではないのか?
日本の音楽もまた、アメリカ化しているのか?
◎グローバル化ってなんだろう?
それがテロを起こすひとつの原因になっているのか?
◎多様化⇔画一化
対極となるこの2つの語であるが、インターネットはどちらにも進みやすい特性を持っている。
今まで叫ばれてきた「グローバル化」は、インターネットが「画一化」することによって生まれるグローバル化だったのではないか?
今後は、インターネットが多様化する中でのグローバル化の在り方を考えていかなくてはならない。
(6)EU離脱
イギリスのEU離脱が問題となった。
昨年はギリシャもEU離脱が問題となっている。
豊かな国であるイギリスと、貧しいギリシャ。
対極的な双方の国がどちらもEUを「出たい」と言っている。
経済的に豊かになるために生まれたはずのEUなのになぜ?
特にイギリスの国民投票の結果は、EUが目指してきたグローバル化に、
「イギリス人はイギリス人」という考え方が勝ってしまった。
国の壁は、超えられなかった。
◎グローバル化ってなんだろう?
ミュージシャンとして、どのようにグローバル化に向かっていけばいいのだろう。
どのようにインターネットにつながっていくのか?
どんな問題も、それぞれのフィールドで考えていくことで、世の中が変わっていく。
2016年も半分残っている。きっと色んな事が起こる。
怖かった、良かった、だけではなく、もっと先にあるものを考えることが大切。
***********************************************
講義としてはこれで終了でした。
あとは質疑応答があったのですが、その前に感想を書かせていただけたらと思います。
テロの話題からの流れが衝撃的でした。
今まで気づきもしていなかった膜がめりめりと音を立てて剥がれていき、その先が見えたかのような感覚というか。
「全部が何かの国の音楽に染まる」
というフレーズ、今まで考えたこともなかったです。
多様性と画一性の一見相反する要素をインターネットはどちらも内包しているということや、グローバル化という考え方も多様性、画一性どちらの視点からも考えることができること、ほんと今まで感じていなかった視点で衝撃の連続でした。
ふああああああああ!って脳みそが活性化していくのを感じました。
この感覚、普通に授業聴いていても滅多に味わえない感覚でした。
きっとあやくすが途中で言ってた、
「色んなアイデアがつながった時の快感」
に近いものがあると思います。受け身だけど。
それを感じさせてくださるあやくすの講義、ほんとすごすぎる……。
あやくすのおっしゃるように、わたしも、わたしの働く仕事のフィールドから、世界を見て、そして考えて生きていきたいと思います。
昨年とはまた違った観点で音楽とテクノロジーについて学べ、また、未来の音楽や世界についても音楽を通して考えることのできた、とても実りある時間でした。
質疑応答に続きます笑
***********************************************
Q.音階はなぜCから始まるの?
A.全部ドから始まるわけじゃない。
RPGはレから始まる!
って言って適当に弾いてるけど!って弾き始めた曲がほんとにゲームミュージックだった!すごすぎる
Q.以前調を決めるときはそのさんの声で決めるとおっしゃっていましたが、インストゥルメンタルなどの際に彩雨さんが調を決める決め手は?
A.
①響きの中で気持ちいいところを探す
②SEだったら、2曲目につながりやすい調
③♯3つの調は三位一体でクラシックにはよく使われていたりする。
調の決め方は人それぞれ。
前後のつながりだったり、曲の雰囲気で決めたりする。
***********************************************
ありがとうございました。
素敵な時間をありがとうございました。
何度となくしているお話なのでもうええっちゅーねんって方もいらっしゃるかと思うのですが、わたしは初めて観た摩天楼オペラのメンバーが彩雨さんなんです。
そしてそれが、彩雨さんが客員教授を務められるきっかけとなったであろう講演会だったんです。
その時はこんなにも摩天楼オペラが大好きになるだなんて思わなくて、ほんと学びの一環という感じだったのですが、それがこんな風にオペラを大好きになって公開講義も続いていて、ほんとに嬉しく思います。
彩雨さんの考えていることをたくさん聴ける機会ってほんとに講義以外だとなかなかないですしとっても貴重です。
色んな時事ニュースについての彩雨さんのお考えを聴けるだけで楽しいですし、お勉強の内容も彩雨さんがお話になることで何倍もわかりやすく楽しいんです。だから彩雨さんの講義大好きです。
わたしが講義に行き始めるきっかけは場所が京都だったからですが、京都と彩雨さんに縁が生まれているのも嬉しいです。
今年も無事参加できてよかったですし、本当に素晴らしいお話を聞くことができました。
ありがとうございます。
参考資料のような形でノートもスキャンしたのをまとめてみました。
絵もあるし打ちなおしといてなんだけどこっちの方が見やすいのかもしれない…。