*SAKULIVE*

15歳の夏から続く、with BREAKERZな人生の軌跡。

メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション

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メアリー・エインズワース

浮世絵コレクション
at 大阪市立美術館

先日、大阪市立美術館で行われている「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」に行ってきた。

アメリカの女性収集家・メアリー・エインズワースの浮世絵を展示しているこの展覧会。
作品数は200点と非常に多く、浮世絵はひとつひとつのサイズが比較的小さく描写も細やかなので、油断するといつまでもいられてしまう空間だった。

浮世絵の黎明期といえる1670年頃に描かれた、白黒の墨摺絵から、それに紅を差すことで色が加わった紅絵、そして、紅以外の色も加わって色彩豊かな表現が可能となった錦絵まで、浮世絵の歴史を網羅したコレクションには圧倒された。

わたしは高校時代世界史選択だったため、日本史には明るくないのだが、そんなわたしでも知っている葛飾北斎歌川広重の錦絵もたくさんコレクションされており、非常に見応えがあった。
浮世絵は、数年前にモネの「ラ・ジャポネーズ」が来ていた時くらいしか見たことがない気がするのでどれも新鮮だった。

西洋芸術が「いかに写実的に描くか」ということに尽力していたであろう17世紀に、日本において線で描かれた絵画が発展したのは、鎖国の賜物だろうと思う。

間違いなく、現代の日本のマンガ・アニメの栄華の礎はここにある。
マンガ・アニメは江戸時代から脈々と受け継いだ、日本の絵画の心を現代に伝えているのだと思う。

日本、鎖国してて、よかった~~~!!!

と思わずにはいられなかった。まじで。

印象的だったのは、錦絵の題材に、当時人気の高かった芸者や役者が、数多く描かれていたことだった。

西洋の油画と日本の錦絵の最も大きな違いは、
「量産ができるかどうか」
だと思う。

説明書きを読んで推察するに、芸者や役者の錦絵は、現代におけるブロマイドや生写真のようなもので、人気の役者の錦絵はたいへんな人気を博した模様。(曲解があったらすみません)

みんな女性はうりざね顔だし、わたしにはもとの役者のお顔はさっぱり想像できなかったけれど、それでも当時のその役者のファンの人たちが、こぞってその錦絵を購入していたんだろうなぁ。

今でも、なぜか二次元化されたキャラがたとえ本人にあまり似ていなくとも、そのグッズが出たら買っちゃったりするし、それの似たような感じなんだろうか。
自分の生まれ育った国とはいえ、どうにも数百年前の江戸にはシンパシーを感じる部分が多い(笑)

当時はうりざね顔が美の象徴だったというから、美の常識は時代によって変遷していくものである。

“うりざね顔=美”というものさしがあるせいで、どの画家が描いた作品もみんなうりざね顔なので、正直わたしには、画家による表現の機微があまり分からなかった。

しかし、東洲斎写楽という画家は、28枚の作品を一気に手がけるという華々しいデビューを飾ったにも関わらず、役者の特徴を強調した作風が受け入れられずに、そのまま筆を折ってしまったらしい。

確かに、その人の作品は、見た瞬間
「え?」
って違和感を覚えた(笑)
世間に受け入れなかったのもうなずける。これである。

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東洲斎写楽「二代目小佐川常世一平姉おさん」(1794年)

片桐はいりさんに似てる…。

しかし、改めて出品リストを見返していると、どうやら東洲斎写楽の作品はこの「二代目小佐川常世一平姉おさん」しかないらしく、1枚だけでこれだけのインパクトを残せるのも、逆においしい気がする……(笑)

驚いたのが、二代目や五代目の市川團十郎を描いた作品があったこと。

そう。あの、市川團十郎である。

これまでは、襲名のニュースをなんとなくで見聞きしていたし、名前が変わると誰が誰だか分からなくなるなと思っていたのだけれど、いざ、

「江戸時代の浮世絵を見に行ったら市川團十郎って書いてあった」

という経験をすると、いかに歌舞伎の伝統を守り続けていくことが大切かを思い知らされる。

ただの絵だったらあまり実感沸かなかったかもしれないけど、作品に「市川團十郎」と思いっきり漢字で書かれているのだ。

調べてみると、13代目の市川團十郎は来年5月に市川海老蔵が襲名するらしい。
その意味が大きすぎて、逆に軽いことしか言えないけれど、海老蔵にはこれからも頑張ってほしい。

「江戸時代から続く~」って言われても、それを実感できる瞬間ってなかなかない。
日常で見聞きしていたものの見方が変わった。

そして、葛飾北斎歌川広重のコレクションが数多くみられるのも、この展覧会の大きな魅力である。
2人の作品をここまで多く見たのは恥ずかしながら初めてだったのだが、緻密な描写と美しい色彩に魅了された。

葛飾北斎の、様々な場所から富士を描いた富獄三十六景をはじめ、清少納言や李伯など、歴史上の人物や和歌について描いた作品はどれも美しく、物語性に溢れていた。
空の色彩や藍、グラデーションもとても美しかった。

また、下目黒や品川から臨んだ富士の作品もあり、驚いた。
東京から富士が見えた時代の景色ってどんなだったのだろうか。想いを馳せる。

作品を集めたメアリー・エインズワースも、浅草寺を訪れ人力車に乗った際、車夫に
「美しい富士!」
と言われ見た富士の美しさが忘れられない、と書き残しているらしい。
浅草寺から見える富士、どんな富士だったのだろう。

今回の展覧会は、説明書きの文章にとても力が入っているなと感じた。
どれも読み応えのある文章でとても勉強になった。
(上記の浅草寺のことも説明書きに書いてあった)

北斎は独自の画風を貫き、結果的に途中で錦絵の世界から去ってしまったのに対し、歌川広重は大衆に愛される画風を貫き、また、錦絵の色をつける職人の技量を尊重しながら作品を描いたそう。これも説明書きから学んだことである。

この展覧会を実現させた人々の愛を感じた展覧会だった。

これをきっかけに、これからも様々な浮世絵を見ていきたいな、と思った。


「メアリー・エインズワース 浮世絵コレクション」は、今週末9月29日まで大阪市立美術館にて。
巡回は大阪で最後なので、これが終わるとアメリカに帰ってしまう模様。
とてもおすすめ。


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歌川広重「名所江戸百景 浅草田甫酉の町詣」(1857年)

いつの世も日本人はねこが好き。