*SAKULIVE*

音楽と桜とミルクティーをこよなく愛す社会人の、音楽についての感想文集。

人間失格 太宰治と3人の女たち



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人間失格 太宰治と3人の女たち」
観てきました!(((o(*゚▽゚*)o)))

監督は蜷川実花、主演は小栗旬

太宰治と3人の女を巡る、「人間失格」誕生と太宰の死までが描かれます。
3人の女には、本妻に宮沢りえ、愛人に沢尻エリカ、最後の女に二階堂ふみ

蜷川実花監督作品といえば極彩色の華々しい描写が特徴ですが、今回はその姿は要所に抑えられており、先日公開された「Diner」とは対照的です。

太宰治が主人公となっていますが、この作品で描かれているのは、“3人の女”のそれぞれの生き様だと思います。

太宰を信じ、家を守り支える本妻。
太宰に憧れ、子を身ごもり生き抜く愛人。
太宰を愛し、すべてを奪う最後の女。

正直、登場人物の誰にも共感はできないけれど、それぞれに理解できる欠片はあります。

いつの世も、芸術の天才の周りには、こういう人たちが集まるんだな、と感じました。

一度でも、“誰か”の創った芸術に惚れ込んだ経験のある人なら、きっと理解できる部分のある作品だと思います。

芸術そのものに惚れ込むのではなく、その芸術を生み出した才能に心酔してしまうと、愛の形が行きすぎてしまうのは、いつの時代も変わらないのだな、と痛感しました。

わたし自身、その才能に憧れるアーティストがいるので、気持ちは分からなくもありません。

芸術作品を生み出す“人”に惚れ込んだ経験のある者として、観ながら思い出していたのは、自分自身が好きなアーティストのことでした。

「Diner」に小栗旬が出演していたのと同様、「人間失格」にも、「Diner」で主演を務める藤原竜也が出演しています。 

藤原竜也が演じるのは、太宰治の“盟友”坂口安吾

桜の森の満開の下」の作者です。

………思い出と結びついた方も多いはず。
そう、「桜の森の満開の下」は、AKIHIDEさんの楽曲「桜の森の満開の下」のモチーフになった小説です。

藤原竜也の役名は劇中には登場せず(さらっと呼ばれる場面があったかもしれないけど聞き取れず)、でもきっと名の知れた作家の役なんだろうなと終わってからパンフレットで役名を調べて、驚きました。

そして、太宰治坂口安吾は同じ無頼派の同志であったと知り、太宰の姿とAKIHIDEさんを重ねながら観ていたことは間違いではなかったのかもしれないな、と感じました。

………太宰、誤解を恐れずに、しかもあまり使いたくない言葉で表現するなら、ただの糞麺なので、そういう部分はAKIHIDEさんにあってほしくはないのですが(笑)

生み出す作品が強烈な引力を放っている、という点においては共通項があるように感じます。

太宰の最期が最期だけに、あまり共通項を探したくはないのですが。
AKIHIDEさんには長生きしてほしいです。


作品に惚れ込んだアーティストには長生きしてほしい。
そう思うのってきっと自然なことですよね。

 

そう思うからこそ、二階堂ふみ演じる富栄がただただ許せません。

(以下、ネタバレを含みます)

富栄は太宰治の人生を奪った人です。

“最後の女”と表現されるのは、太宰と一緒に入水自殺したのが富栄だから。

流れが激しいため、
「遺体があがらない」と言われる川にかかる橋の上。

「もうちょっと生きよう」
という太宰に、
「ここで死ななければ離れ離れになってしまう。今ここで死にたい」
と、赤い紐を二人の腕に“絶対にはずれない結び方”で堅く結ぶのです。

富栄は身勝手です。

ただ一緒にいたいからと入水自殺を選ぶ理由が理解できません。
太宰の人生を奪うことは、これから生まれたかもしれない、すべての作品が生まれる可能性を絶ってしまうことに直結します。

自分の身勝手でその選択肢を選べてしまう彼女に、太宰の作品が好きだという資格はないと思います。

太宰を作家としてではなく、ひとりの人間として好きになった女性なら、理解できます。
ただ、富栄は
「(太宰の作品が)好きよ」
と言っている。

だからこそわたしは許せないのです。

富栄がきらいです。

※太宰作品にわたしは正直強く思い入れはないので、ひとりの芸術作品を生み出す“人”に惚れ込んだ経験のある者として書いています。

それとは対照的に、太宰の才能を愛し、したたかに強く生き抜いた沢尻エリカ演じる静子には共感が持てます。

作品のモデルとなり、作品の中で永遠に生き続ける上、その才能を愛した男との子を育てられるって、きっと幸せなことです。

静子は3人の女の中ではいちばんの勝ち組なんじゃないかな、とすら思います。

3人の女には、おそらくそれぞれにイメージカラーがあります。

宮沢りえは、青。
沢尻エリカは、ピンク。
二階堂ふみは………わからん。(笑)

わからんのかいって感じだけど(笑)

特に沢尻エリカ演じる静子の“ピンク”は、作品を通して貫かれています。

登場シーンの梅の花にはじまり、広大な田舎道によく映えるくすみピンクのスプリングコートと総柄のロングワンピースもピンク。

静子の住まうお屋敷もピンクをメインに装飾が施されています。

今回、全体的に蜷川実花特有の極彩色は影を潜めているので、蜷川実花的色彩は、沢尻エリカの出演シーンに凝縮されています。

静子の纏う色彩すべてが美しく、沢尻エリカが好きな人は一見の価値ありです。

宮沢りえ演じる本妻・美智は、凛としていて美しかったです。

富栄に対する憎悪が深い理由に、
「太宰のこれからの作品が生まれる可能性を奪った」
ということの他に、
「太宰の家庭を壊した」
という点も挙げられると思います。

静子は家庭を壊さなかったけど富栄は壊した。

涙と青のインクのシーンは胸に刺さります。

そして、富栄は家庭を壊すのみに留まらず、太宰の命さえ奪います。

「夫が愛人と入水自殺」

この時の美智は、どれだけ苦しんだことでしょうか。

しかし、最後の洗濯のシーン、凛と強く生き抜く美智の姿は、とても美しかったです。

美談にしていい話ではありませんが、それでも、強く生き抜く美智の姿は大きな救いになりました。

どんな時代でも、生き抜いた者こそ強く美しい。

それを教えてくれる作品だと思います。